2016/10/18 18:42

松尾たいこです。

2014年の夏から福井で「千年陶画プロジェクト」をスタートしました。
そして会う人によく「作るのにどのぐらいかかるんですか?」とか
「どうやって作るんですか?」って聞かれます。
陶芸ってやったことがない人にはよくわからない世界みたい。
という私も、自分がやってみるまではどんなものなのか全然わからなかったけど。

だから、今日は作品のひとつ「ふくうま」ができるまでを写真を交えて、紹介します。
1)まずは越前の土を適量取って丸めます。

陶芸用に使う土はいろいろありますが、私が使っているのは福井・越前で取れる土。
焼くと茶色くて素朴な風合いになるところが気に入っています。
石英(せきえい)分というのが多く含まれていることで、他の土よりも高温で焼くこともできるし、硬く焼きしまるそうです。
粒子が細かいなめらかなタイプもありますが、私はゴツゴツとプリミティブな感じが好きなので、一番荒いタイプの土を使います。


2)ひたすら練ります。

空気を抜くことと土を扱いやすく柔らかくするのが目的です。
練り方は、「菊練り」といって、片方の手で押して片方の手で少し捻りながら回転させていきます。
それを繰り返すと、片側の断面が菊みたいなかたちになります。
力が弱いので苦手な作業です。
特に荒いタイプはいっぱい混じった小さな石みたいなのがあって、かなりの力が必要です。


3)サイズを決めます。

いままで作った「ふくうま」と同じ重さになるように粘土の量を調整します。


4)まずはざっくりかたち作り。

だいたいの馬のかたちの原型を作っていきます。
中はくり抜いて、均等な厚みにしていきます。
こうすると、粘土が乾きやくて、焼いた時にも割れにくいのです。
また重くなりすぎないという利点もあります。
単なる丸だった粘土が、どんどん自分のかたちになっていくこの時間が一番好きかもしれません。


5)かたちを作り上げていきます。

全体を見ながら作っていくので、回転台の上での作業になります。
くるくる回しながら、前からも横からもかわいくなるようにバランスを取っていきます。
こういうところが、絵を描くという平面の制作とは違っていて新鮮で楽しいです。


6)微調整を繰り返してかたちを決めていきます。

何度も回転台をくるくる回して、「かきべら」などでいらない粘土を削ったり、また足したりしていきます。
真剣なまなざしですね!
この時は、あっという間に時間がたっていきます。


7)線を入れて仕上げていきます。

「線かきべら」を使って、尻尾や目を描いていきます。
荒いタイプの土なので、細かい砂や石の粒に引っかかってラインが崩れることもあります。
でも粘土なので、一度その部分を平らにして描き直すことができるので、リラックスしてやるようにしています。
あんまり気負い過ぎると、かわいいものができない気がするのです。


8)粘土でのかたち作りは完成。

ようやくかたちが出来上がりました。
この後、乾かしていきます。
季節によりますが、少なくとも一週間ぐらいはかかりますね。
急激に乾かすとひび割れする原因になるので、ゆっくり乾かします。
だから乾燥が激しい時期には、発泡スチロールの箱に入れて蓋を少しだけずらしたり、濡れタオルをかけたりと調整をします。


9)一回目の窯入れ(素焼き)。

一週間以上かけて乾かした粘土作品を、窯入れします。
一度目の窯入れは、素焼きのためです。
素焼きは、低い温度で行います。(1000℃以下)
窯の温度は徐々に上げていき、その後も熱を冷ましてから取り出さないといけないので三日間ほどかかります。
上の写真は、素焼きが終わったもの。
オレンジ色がきれいです。
この時点で、一回り縮んでいます。


10)素焼きしたものに彩色あるいは釉薬をかける。

素焼きしたモノに、色をつけます。
方法はいろいろありますが、上の写真は、陶器用の絵の具で色をつけたモノです。
発色がよく、立体的なモノに塗っても絵の具が垂れてきません。
他にも、釉薬を全体に塗ったりと、この時もいろんな「ふくうま」を作りました。
素焼きした馬を目の前にすると、「あ、この馬はこの色がいいな」ってどんどん色のイメージが膨らむんですよね。


11)二度目の窯入れ(本焼き)→そして完成!

二度目の窯入れは、高温で焼きます。
これを本焼きと言います。
1000℃以上の高温で焼き上げますが、10℃ぐらいの温度差でも仕上がりに違いが出るんですよね。
何度も試作と失敗を繰り返しながら自分の好きな色を出せるようがんばってます。
こちらも一度目の窯入れ同様、三日間かかります。

この時間が一番ドキドキするんですよね。
窯の中の位置や少しの温度の違い、粘土にヒビが入ってたかどうか、釉薬がきれいに乗っているかどうか・・・
そういうことで失敗もかなりあります。

本焼きで、さらに一回り小さくなります。
そしてとっても丈夫な越前の土で作った「ふくうま」が完成!
荒い土のプリミティブさと私の持ち味のポップさが共存しているところが好きです。


☆ 下に、完成した「ふくうま」をズラリと並べてみました。
はにわ風やチョコレート色など、同じ形なのに釉薬の違いで全然雰囲気が変わってくるところがおもしろいなあと思います。
それから、見る角度によっても、とぼけてみえたり、りりしくみえたりするのも立体ならではですね。





お尻だけ並べてみたらそれもまたかわいい!

いかがでしたでしょうか、作品の出来上がるまでの物語。
ひとつの作品が出来上がるまでには、数週間かかるのです。

窯を開けて、割れもせず満足いく作品がちょこんとお出迎えしてくれた時には、やったー!と飛び上がりたくなるぐらい嬉しいです。